会計士見習いの日記

会計にまつわる時事ネタや実務で感じたことなどを投稿

"Profit is an opinion, Cash is a fact" - 会計利益とキャッシュフローの違いとは

黒字・赤字というような会計利益と、キャッシュフロー(現金収支)の違いについて感覚的に違うものだとわかっていても、きちんと説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。

今回は会計利益とキャッシュフローの違いについて書いていきます。

 会計の勉強をしていなかった頃、「○○株式会社、××億円の黒字」という新聞の記事を目にしたとき、僕は「あー、この会社こんな儲かったんだなぁ」と思っていました。当時の僕は会計上の利益額とキャッシュフロー(現金の収支)の違いをきちんと考えていなかったのです。しかし会計の勉強をしたことで、会計利益とキャッシュフローは全く異なるものであると知りました。

 では、会計利益とキャッシュフローの具体的な違いはなんでしょうか。

 まず、両者は根本的に計算対象が異なります。利益計算が会計上の資産・負債を増減させる項目を対象とするのに対し、キャッシュフローは会計上の資産の一部である「現金及び現金同等物」(以下、現金等)を増減させる項目のみを計算対象としています。つまり、キャッシュフローよりも会計利益の方が圧倒的に計算範囲が広いのです。

 また、計算を行うタイミングにも違いがあります。それを端的に表した有名な言葉が「Profit is an opinion,  Cash is a fact」です。「利益は(経営者の)意見、キャッシュ(フロー)は事実」という意味で、会計利益とキャッシュフローの違いを端的に表したものです。キャッシュフローは実際に現金等の増減があった場合にのみ計上される一方で、会計利益には資産・負債を実際に増減させた項目のみではなく、経営者の見積もりなどが含まれているのです。経営者の見積もりは例えば、貸倒引当金減価償却費の計上が挙げられます。つまり、キャッシュフローは客観的事実のみで計算されるのに対し、会計利益には主観的要素が含まれており、一定の不確実性を有しているのです。この不確実性については次の章で詳しく触れていきます。

 

  • なぜ会計利益に主観的要素をもたせているのか

 会計利益に客観的要素(見積もり等)が含まれている以上、収益・費用が計上されたからといって確実に資産・負債の増減が生じるわけではありません。その意味で会計利益には不確実性が内在していると言えます。

 「会計利益は事実が生じた場合のみ認識するようにすれば、信頼度も増すし、キャッシュフロー計算署との整合性がとれ、わかりやすい情報になるんではないか」という意見もあると思います。確かに、事実のみに基づいた会計処理にすれば、会計利益のわかりやすさは向上するのかもしれません、しかし現在の会計基準における究極の命題は「投資家にとって有用性のある情報を提供すること」であるとされます。事実に基づく情報だけで投資家にとって有用な情報を提供できるでしょうか。例えば、以下のケースではどちらが投資家にとって有用な情報になるでしょうか。

 

「A社はB社に貸付を行っているが、B社は財政難に陥っており、来期にはほぼ確実にデフォルトが起こると予想されている。」

 

このとき、当期の会計処理として①事実のみに基づく処理と②見積もりを反映した処理の二通りを想定するとします。

①の場合、当期にデフォルト(事実)は生じていないので現時点では何ら会計処理を行いません。一方で②の場合、現時点で一定額の貸倒損失を計上する必要があります。

このとき上述した状況において、会計利益が主観的要素を含んでいることで、投資家に対して警告を発することができ、また投資家がその情報を投資判断に用いることができるのです。

企業側、会計士側がこのケースのような事実に気づいているのにもかかわらず、投資家(プリンシパル)に対して何ら情報発信をしないというのはエージェント、監査人としての役割を放棄していると思います。つまり、会計の至上命題=投資家への有用な情報提供を果たすためにも、客観的事実だけでなく一定の主観的要素は必要とされるのです。

 

  • 主観的要素が内在することのデメリット

以上、会計利益に主観的要素が入ることのメリットの部分に触れてきましたが、もちろんデメリットもあります。

例えばデメリットの一つに「恣意性の介入」があります。

キャッシュフローのように事実に基づいて計算される情報であれば、経営者がその情報を書き換えるためには事実自体を歪める(不正を行う)しかなく、情報操作を行うことのハードルは上がります。しかし、事実に基づかなくとも会計利益を計上できるのであれば、経営者には投資家に成績をより良く見せようとする思惑が働きます。このような利益操作は結果として会計情報の有用性を損ねる結果に繋がってしまいます。

「恣意性の介入」に対して、会計基準では、主観的要因は合理性・蓋然性*の側面から認識するか否かの判断が行われます。経営者の見積もりなどを反映するには、客観的な視点から合理性があるか、蓋然性は高いかが判断されます。つまり、(経営者の)意見の信頼度が高い場合にのみ認識が行われるのです。

このように、主観的要因の認識にあたっては一定のフィルターが設けられているものの、結果として会計利益と事実が乖離してしまう可能性はゼロではありません。ですがその可能性をできるだけ少なくする責任が経営者や監査人には存在するのです。

 

*蓋然性とは、将来的に事象が起こるか否かの度合いを表します。蓋然性が高いほど、将来的に事象が起こる可能性が高いということになります。

 

  • まとめ

以上の内容をまとめると、以下のようになります。

両者は根本的に計算対象が異なり、会計利益の方が計算範囲が広い。

キャッシュフローが客観的事実のみで計算されるのに対し、会計利益には客観的事実のみならず経営者の主観的要素が含まれている。

主観的要素が含まれている背景には、「投資家に対して有用な情報を提供する」という会計の至上命題がある。

主観的要素が含まれている以上、恣意性の介入などにより、利益操作が行われる可能性は排除できないというデメリットが存在する。

 

 

株式分割で株価はなぜ上がる?好決算+株式分割発表のアップルが時価総額世界一を奪還

アップル時価総額、再び首位 アラムコ抜き8カ月ぶり

「アップルの時価総額は1兆8400億ドル(約193兆円)に達した。時価総額で世界首位に立つのは、アラムコが新規株式公開(IPO)を果たす直前の2019年12月10日以来となる。」

アップル株は31日、前日に発表した好決算を受け、終値ベースで前日比10%高と急伸した。新型コロナウイルスのまん延で在宅での学習や勤務が増え、同社製品の需要が拡大した。20年4~6月期の売上高と純利益は市場予想を上回った。同時に株式分割を発表し、個人投資家がアップル株を買いやすくなるとの思惑も株価を押し上げた。」

日本経済新聞電子版2020 8/1付)

 

 アップルが時価総額*でサウジアラビア国営企業サウジアラムコを抜いて首位に返り咲きました。

*時価総額は「株価×発行済株式総数」で計算できます。

アップルの株価が400ドルの大台を突破した背景としては、①好決算に加えて②株式分割の発表という2つの要因があります。

まずは、①好決算の発表ですが、コロナウイルスで多くの企業が打撃を受ける中、アップルは在宅勤務・学習の恩恵を受けむしろプラスの影響を受けました。売上高は四半期としては過去最高を記録し、アナリスト予想を大きく上回る決算が投資家に好印象を与えたようです。

株価上昇の2つ目の要因として②株式分割の発表が挙げられます。

株式分割とは、その名の通り発行している株式を一定割合で分割することで、例えば分割割合が1:2であれば投資家は既存株式1株に対して、新たな株式を1株受け取ることになります。

今回のアップルのケースでは分割割合が1:4に設定されているので、1株に対して3株を受け取ることになります。

株式分割では、1株あたりの株価が分割割合に応じて減少するため、分割の前後で投資家が有するトータルでの経済的価値に変化は生じていません。例えば、400ドルの株式が1:4で分割された場合、株価は1/4、つまり100ドルになります。このとき投資家の有する経済的価値は100×4=400で分割前と変わりません。とすると、株式分割によって投資家が受ける恩恵とはなんでしょうか?

その恩恵とは一言でいえば「流動性の向上」です。

株価は需要と供給の一致で決まりますが、株式の「流動性」は需給に影響を与えます。ここでの「流動性」とは簡単にいうと、「株式がどれだけ買いたいときに買え、売りたいときに売れるかを示す度合い」のことをいい、通常流動性が高いほど価値は高く、逆に低いほど価値は低くなります。

例えば、一株あたりの経済的価値が等しい2つの企業(A,B)を想定します。

  • 企業A:上場企業、一日の株式売買は平均100万株
  • 企業B:上場企業、一日の株式売買は平均1千株

企業A,Bを比較したとき、株価が高いのはどちらでしょうか?

それは「企業A」です。

企業Aのように頻繁に株式が売買されていれば、投資家は好きなタイミング・価格で売買をすることができます。

しかし、企業Bのように取引機会が少なければ、理想の条件で売買できる可能性は相対的に低くなります。

 このため合理的投資家であれば、取引機会の多い企業Aをより高く評価するのです。

極端な話をすると、利息が同じとき「好きなタイミングで引き出せる銀行」と「1年に一度しか引き出せない銀行」なら前者を選びますよね。

投資家にとって流動性は高いほど都合が良いのです。

株式分割を行うと、投資家に帰属する実質的な経済的価値は変わらない一方で、市場に出回る株式の数が多くなることでその流動性は高まります。

このように株式分割による流動性の向上が株価の上昇要因となるのです。

 

 

 

トヨタが会計基準を米国からIFRSに変更

トヨタ自動車が2021年3月期から国際会計基準IFRS)へと移行し、海外展開する日本の多国籍企業会計基準IFRSにほぼ一本化される (日本経済新聞電子版, 2020/6/24付)。

 

トヨタがこれまで採用していた米国会計基準に変えて、来年からIFRSを適用することを公表しました。

変更の理由としてトヨタ側は「比較可能性の向上」を挙げているようです。

これに加え政策保有株式、いわゆる持ち合い株式の会計処理も変更理由の一つではないかと紹介されています。

米国では持ち合い株式の時価評価差額が純損益に計上されますが、IFRSの場合にはOCIとして処理されます。つまり、IFRSでは純損益には影響を与えません。

トヨタ自動車は19年3月期の決算で株式の未実現損益として約3400億円の損失計上をしてます。このうち持ち合い株式に関わる損失がいくらなのかはわかりませんが、通常持ち合い株式は売却を意図していませんから、当該株式に係る多額の損失が計上されるのは避けたいはずです。特に当期純利益が重視される日本では尚更です。

コロナ相場のように荒れた相場では株価の乱高下で持ち合い株式の評価額も大きく変動するため、トヨタ側は利益に係る不確実性を少なくしたいと考えたのではないでしょうか。

今年のこの時期に発表されたのも、前々から準備していた中でコロナショックが決め手となった...とか勝手に推測してます。

ともかく、米国会計基準を採用する数少ない企業がまた一つ減ってしまいます、、

20年前と比較すると約半分になっているそうです。

最近IFRS統合化のニュースないなーと思ってたら、いきなりビッグニュースが飛び込んできました。

 

④実務に携わってみて感じたこと その1

今回は監査実務に携わってみて感じたことを書いていきます。

 

4月中旬、コロナの影響でクライアントも監査法人も機能がマヒするなか、在宅で勤務が始まりました。(ほんとは3月上旬からの予定だったのですが、大幅に予定が遅れました)

お世話になることになったのは金融機関の監査を担当しているチームでした。

 

そして新人として任された業務は「確認状の突合作業」です。

確認状という企業の保有する資産が本当に存在するかどうかを検証するための証明をもらう書類があるのですが、クライアント側が主張する額と実際の額が一致するかを確かめていきます。新人は誰でも通る道だそうです。

しかしこの突合作業...はっきり言って超単純な作業です(笑)

↓こんな感じの書類を永遠と見てます。

 

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確認状WEB

 

計上額が正しいかを見て、チェックをつけるという作業を永遠繰り返します。

しかも、クライアントは大手のため、突合する数もめちゃくちゃ多いのです。。

現在この作業を始めて3週目ぐらいになりますが、まだ終わりは見えず。。

ただ先輩たちにも「つまんないっしょ?」って言われますが、僕はこの手の単純作業に対する耐性はかなりある方だと思うので、先輩たちが思ってるほど辛くは感じてないのかもしれません。さらに視力悪くなってる気はしますが。

単純な突合作業でも魅力はあって、例えば外国の会社から英文の回答があると見るのわくわくします。

 

チームの先輩たちは「めちゃくちゃデキる人たちだなー」って印象です。

在宅勤務がほとんどになる状況は先輩たちも初めての経験で大変なはずなのに、新人の自分を気遣ってめちゃくちゃ面倒見てくれます。

質問への回答は早くてわかりやすくて丁寧だし、チーム会議での報告は簡潔でわかりやすいし、ほんと、見習うべきところが多すぎる。。

正直、一、二年後に自分が今の先輩たちの姿になっているビジョンは見えないなー。

とにかくちょっとずつ学んでいくしかないですね..!

 

お昼は自分へのご褒美でウーバーイーツ頼んでるんですが、毎回お店を開拓していくことが密かな楽しみになってます(笑)

 

 

 

 

③各基準でバラつく仮想通貨の会計処理

今回は仮想通貨がもたらした会計上の問題と今後の展望について触れていきます。

 

■ 仮想通貨の定義

まず仮想通貨って結局何なのか考えることが会計処理を考える上で重要となります。

そこで、まずは仮想通貨の定義を見ていきます。

仮想通貨の会計処理上の定義は下記の①②いずれかを満たすものとされています。

 

①物品購入・サービス提供を受ける場合に、代価の弁済のために不特定の者に対して使用できるもので、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却ができる財産的価値で、電子情報処理組織を用いて移転できるもの

不特定の者を相手方として①と相互に交換を行うことができる財産的価値で、電子情報処理組織を用いて移転できるもの

(改正資金決済法第2条6項より)

 

このため、不特定の者を対象としないものについては「仮想通貨」の定義には含まれていないのです。

 

■ 仮想通貨と法的通貨の違い

仮想通貨と法的通貨(ドル、円など)との決定的な相違点は2つあります。

それは ①仮想通貨は無形の資産であること ②発行主体に債務が生じないこと です。

 

①仮想通貨は無形の資産であること

法的通貨は紙や金属から作られる有形の資産です。

一方、仮想通貨は電子的データによる目に見えない無形の資産です。

 

②発行主体に債務が生じないこと

法的通貨の場合には、発行主体(日本で言えば日銀)にとって債務として認識され、貸借対照表上、発行時に負債が計上されます。これは発行主体が発行額分の債務を負うことでその分の価値を保証していると言えます。

一方、仮想通貨はマイニング業者*が新規発行の役割を担います。この際、生みの親であるマイニング業者には報酬が支払われるのみで、債務は負いません。つまり、仮想通貨は法的通貨とは違い、その価値を保証してくれる主体は存在ないのです(人々が勝手に「価値のあるものなんだ」って思うことで欲する人が現れ、実際に価値が生まれるわけです)。実際「仮想通貨」というと法的通貨との混同が生じる可能性があるため、国際的には'virtual-currency'から「暗号の資産」という意味で‘crypto-asset'と呼ばれるようになっており、日本でも「暗号資産」という呼称が一般的となっています。

 

*マイニング業者は仮想通貨の新規発行を行なっている事業者で、新規発行(マイニング)を行うことで報酬として一定単位の仮想通貨を報酬として得ることができます。

 

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coinpost

 

■ 仮想通貨の会計処理(保有者側)

さて、本題の仮想通貨の会計処理ですが、実はこれについては各基準で対応が分かれていて、悩ましい問題になっています。

その最大の悩みの種が仮想通貨の会計上の分類をどうするかという問題です。

ここでは仮想通貨の会計処理に最も積極的な姿勢を見せている(と思われる)IFRSの考え方を例にとります。

 

IFRS上で会計分類を行うとすれば以下の選択肢が考えられました。

 

①金融資産(IAS第32号)

②無形資産(IAS第38号)

棚卸資産(IAS第2号)

 

ただ、仮想通貨は新たに生まれてきた概念ですから完璧に対応できる基準は現時点で存在せず、かろうじて上記の②及び③が適用可能なため、IFRSでは暫定的に③が適用可能な場合には③を適用し、それ以外については②を適用すると結論づけました。

仮想通貨って金融資産じゃないの?って疑問に思う方は(僕も思ってました)は以下の記事が参考になりますので、ご一読いただければと思います(P8から金融資産について書かれてます)。

EY, 仮想通貨の保有者の会計処理

https://www.eyjapan.jp/services/assurance/ifrs/issue/ifrs-others/other/pdf/2018-10-24.pdf

 

一方の日本基準においても仮想通貨の会計上の分類について議論されました。しかしながら、既存の概念で完全に対処できるものではないとして、新たに作られた暫定的な会計基準で処理を行うこととされました。ただし、これについても継続的な議論が必要だと考えられています。

 

仮想通貨への各基準の対応以下のようになります。

結論までの過程は長くなるので省略。

 

IFRS棚卸資産(IAS第2号)で処理できるときは処理、それ以外は無形資産(同第38号)で処理を行う。

日本基準→活発な市場*が存在するか否かにより判定を行う

活発な市場が存在→時価評価し、評価差額を純額で認識

活発な市場が存在しない→取得原価で評価し、低価法を適用

 

*活発な市場が存在するとは「継続的に時価に関する情報が得られる」ような状態をいいます。これを満たすためには取引が長期間にわたって十分な数量及び頻度で行われている必要があります。

 

 

■ おわりに

以上のように、仮想通貨を巡る会計処理は各国によって様々です。最後に、現在の仮想通貨の状況と今後の展望について書きたいと思います。

 

□仮想通貨は国際的に価値の担保された資産となりうるのか?

現在起こっているコロナショックでは金が最高値をつけました。これは金の価値が長い歴史を持ち、「一国のリスクに左右されず、高い財産的価値がある」世界の共通認識があるからです。仮想通貨も「一国のリスクに左右されない」という共通の要素があり、一見仮想通貨の需要が高まりそうな気がしますが、事実コロナショック時では仮想通貨が売り払われました(現在は徐々に回復しつつあるようですが)。過去に盗難事件が起こるなど、まだまだ安全面での不安が大きく仮想通貨の「安定した資産」としての価値が市場では認められていない客観的証拠であると考えられます。仮想通貨の決済手段としての利用はわずかで、現時点ではほぼ全て投機的にしか売買が行われていないといえます。

しかしながら、近年では、フェイスブック社が開発を進める仮想通貨「リブラ」など、世界的に信用のある企業や団体が中核となって新たな仮想通貨を発行する取り組みが見られます。課題は多く残りますが、こうした信頼のある企業が仮想通貨に「信用」を付与することで、世界規模で価値が担保された「グローバル仮想通貨」が生み出される可能性は確実に高まっています。

□今後、仮想通貨の会計処理は進展していくのか?

仮想通貨は新たな概念であり、既存の会計基準で完全に対応できるものではないため専用の会計基準作成の必要性があると考えます。しかしながら、現状ではまだ法令の整備が進んでおらず、会計制度もまだ十分に整備されていないと言えます(基本的に会計基準は法の整備が進んでからその枠組みで策定されるため)。しかし、仮想通貨の市場規模がいつ急拡大するかは誰にも予測できません。市場が拡大してから対応するのでは遅く、早急な法令の整備及び会計基準策定のためのの継続的な議論の必要性があると考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

②国際統一が進む会計基準

今回は、会計基準についての回になります。

会計基準は前回触れたとおり、企業の業績開示のために用いられます。

現在、日本や世界ではどのような会計基準が用いられ業績開示がなされているのかについてや、経済のグローバル化がもたらした会計制度への影響にも触れていきます。

 

■ 世界の会計基準

日本には日本基準(J-GAAP)という独自の会計基準があり、ASBJ(企業会計基準委員会)という組織が基準の設定主体となっています。

一方で世界に目を向けると、主に2つの会計基準が存在します。

それはUS GAAP(米国会計基準IFRS国際財務報告基準です。

前者はその名の通り、アメリカが有する自国の会計基準で、後者はヨーロッパ会計基準になります。(IFRSの読み方はイファース、アイファース、アイエフアールエスなど、人によって様々です。)

発というのも、現在IFRSはヨーロッパ各国にとどまらず、世界規模で拡大を続けています。2016年に行われた調査によれば、対象法域のうち約80%がIFRSを採用しているそうです。

以下の図は会計基準の適用状況に関する世界地図ですが、これを見るとIFRSの拡大が見て取れますね(オレンジ&水色部分がIFRS強制適用済またはその調整中、黄色は任意適用国*)。

 

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国際会計基準をめぐる最近の状況,金融庁

 

*IFRS適用の段階について

①強制適用(全面的にIFRSを採用)ex. 韓国、ブラジルなど

②任意適用(自国の会計基準を維持しつつ、IFRSでの開示も認める)ex.日本、スイス

③自国基準のみを採用(上図青色部分)ex.中国、アメリ

 

 

■ 経済のグローバル化の進展と会計への影響

1990年代以降、世界ではグローバル化が進展し、人やモノが自国を飛び越えて自由に移動するようになります。これに合わせ、経済活動もグローバル化し、海外への投資行動が盛んに行われるようになりました。

この時代、ヨーロッパでは域内統合の動きが加速化します。そして1993年、EU欧州連合)が誕生します。EUの誕生により域内の経済統合が強まると、投資家は自国だけでなく他国への投資も考えます。そして、このとき投資家の判断材料になるのは、企業の出す財務情報です(①も合わせて呼んでいただけると参考になると思います)。ここで、一つ問題点が生じます。会計基準が統一化されていないと投資家は自国の企業とと同じモノサシで他国の企業を見ることができず、投資判断に困ってしまいます会計基準によって、形式や数値に差異が生じるため)。そのため、まずはEU域内で会計基準統合化の動きが始まったのでした。

2001年にEU域内のすべての上場企業にIFRSの適用が義務化され、2005年から本格的な運用が始まりました。

2010年代に入ると、会計基準の国際化はさらに進展し、ブラジル、韓国などヨーロッパ以外の国でもIFRSが導入されていきました。

日本でも2007年にASBJとIFRSの設定主体であるIASB(国際会計基準審議会)との間で、日本基準とIFRSの差異を解消していく方向で合意がなされました(東京合意)。以降、日本は独自の基準を維持しつつ、断片的にIFRSの要素を取り入れていってます(最近でいうと収益認識基準リース会計基準)。

 

■ 企業が会計基準を変えるメリットは?

 

企業が一旦採用した会計方針を変えるには、システムの再構築などのために多大な費用と時間がかかります。国家全体としてIFRSに強制的に変えさせるというならわかりますが、任意適用が認められている場合(日本など)にはあえてIFRSに変える必要性はあるのでしょうか。

企業が会計基準を国際的に採用されている基準に変えた場合に得られるメリットは、比較可能性の向上です。

比較可能性とは、会計上では、企業間比較時系列比較に関する用語で、これを高めることで、比較がしやすくなる特性を指します。

ここでは企業間比較を例にとって話をします。

企業間比較は、ある企業と同業他社の財務数値を比較することです(ex.トヨタマツダの業績比較)。

 会計基準の統合化が進んでいないと企業間比較を行う上でいくつかの問題が生じます。

企業側から問題は個人的には大きく①経営管理上の問題と②資金調達上の問題に分けられます。

経営管理上の問題

グローバル化が進展した企業は国外にも子会社を持っていることが多いです。この場合、子会社がIFRSで本社が日本基準の場合、正確な業績比較ができず、評価に不平等が生じる可能性があります。

②資金調達上の問題

近年、外国人投資家の参入が増えている中で、自国と同じ会計基準でないと投資家は正確な判断ができず、外国人投資家からうまく資金調達を行えない可能性があります。

以上の問題点を解決するために、企業側にも積極的に採用する基準を変えるインセンティブが生じるのです。 

 

■ 今後の展望

 

日本においてもIFRSを採用する企業は年々増加しています。しかしながら、適用には業種によって格差が大きく、特に金融業界においてはほとんどiFRS適用が進んでいないのが現状です。金融業界をはじめ、IFRS適用が進んでいない業界も採用に舵を切っていくかどうか、また、ASBJとIASBとの間で追加的な合意がなされIFRS化が加速するかどうかに注目したいと思います。 

 

①公認会計士と会計監査

はじめまして!初めての投稿です!

簡単に自己紹介すると、現在大学四年生で昨年会計士試験に合格し、現在は都内の監査法人で非常勤として勤務をしている会計士見習いです。

趣味は野球やテニスで、スポーツ関係なら基本興味あります!(昨今の状況で試合が全くない状況で悲しいですが。。)あとは旅行も好きで、長期休みは国内外問わず旅行してます。最近だとフィリピンに行きました。

ブログは初めてで慣れてませんが、これから気が向いたら会計関連の記事を投稿していくつもりです!

今回の内容は、初めての投稿ということで、まずは公認会計士の仕事内容について触れていきたいと思います!

 

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        公認会計士の主な業務である会計監査について書いていきます。

 

■ 公認会計士ってなに?

公認会計士」という仕事をご存知でしょうか?

おそらくピンと来ない方が大半なのではないかと思います。

公認会計士という単語を調べると「公認会計士とは、会計の専門家である。・・・会計監査財務諸表監査を独占業務としている」(Wikipedia)とあります。

 

簡単に言うと公認会計士とは、会計の専門性を活かして、会計監査を独占業務として行う人を指すのです。

 

■ 会計監査の仕事内容

会計監査という言葉を初めて聞く人の方が多いと思いますので、簡単に内容を説明します。

 

会計監査については「財務諸表監査は、財務情報が適正に表示されているかどうかについて、独立した立場から意見を表明するものである」(Wikipedia)とあります。

 

財務情報」とは経営成績などを公にするための情報で、ある一定の期間ごとに会社が発表をします。身近な例でいうと、新聞やニュースで「〇〇会社、△△億円の赤字」というような記事を目にしたことがあると思います。これも会社の財務情報の一部で、監査の対象になる財務情報はこれの詳細版という感じです。

独立した立場から」というのは、補足すると(会社が出す財務情報に対して、会社とは)「独立した(第三者としての)立場から」ということです。

 

適正に表示されているか・・・意見を表明する」とは会社が出そうとしている財務情報が本当に正しいのか、それとも間違っているのかについて、判断を下すということになります。

 

 

つまり、まとめると会計監査とは外部の第三者としての視点から、会社が出す財務情報に対して、その正確性を判断する」仕事ということです。

 

■ 会計監査はなぜ必要なのか

ここまで、公認会計士は会計監査を主な仕事にしていることに触れました。

「会社の情報に口を出すっていうことだろうけど、なんで必要なの?」って疑問が出てくると思います。そこで、次は会計監査の必要性について考えていきます。

公認会計士法第一条に、会計監査業務の必要性についての記述があります。

 

第一条 公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。 

e-Gov法令検索

 

小難しい表現でつらつらと書かれていてわかりにくいです。

僕なりに会計監査の必要性についてよりわかりやすく解説します!

 企業は何のためにわざわざ財務情報を公表しているかというのは、主にステークホルダー(利害関係者)に対して企業情報を発信するためです。ここでいう利害関係者は株主や債権者などの投資家を指します。情報を発信し、この情報に基づいて投資家たちは投資するか否かの判断を下すのです。一般的に会社の業績が上向いていると時は投資をしようとし、下がっている時は投資から撤退しようとします。

 ここで、一つ問題が生じます。業績が良い時に投資がたくさん行われるとするならば、会社はなるべく業績を良く見せたいと思うのです。つまり、会計監査がないとすると、会社は際限なく実際より利益を水増ししたり、業績をごまかすことができるのです。ズルした方がより多くの投資が集まることで、正直者が損をすることになります。また、嘘の情報を信じた投資家は多くの損害を被る可能性があり、この状況が続けばいずれ投資家たちはどの会社の情報も信じることができなくなってしまいます。

 この問題点を解決するために会計監査は存在意義を持ちます。会計監査があることで企業の財務情報の信頼性が担保され、投資家たちは安心して情報を信頼し、投資判断を行うことができるのです。

 

・・・長くなってしまったので簡潔にまとめます。

 

①財務情報は主に投資家が投資判断をするためのもの

→②企業はより多くの投資を集めようと、ウソで業績を良く見せようとする可能性がある

→③ウソをつく企業が得をし、ウソの情報だらけになると投資家たちは企業の出す情報を信じられなくなる

→④会計監査が財務情報の信頼性を担保し、投資家たちが安心して情報を信頼できる

 

以上のように、企業の側からも投資家の側からも会計監査は求められるのです。

会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与する」

先ほどの条文にある会計監査の目的ですが、今なら腑に落ちるのではないかと思います。

 

■ 会計士の仕事は会計監査だけじゃない!

 公認会計士は会計監査業務を主な仕事としていると述べてきましたが、実際には監査業務にずっと携わり続ける人は少数派です。会計の専門家として経験を積んでいくことで、その専門性を監査業務以外の仕事にも活かすことができるためです。

会計の専門家として、監査業務に従事し、ある程度経験を積んだ後に専門性を活かして一般事業会社へ転職したり、コンサルティング業務に監査から離れる人のメインストリームだと思います。

実際合格した人に公認会計士を目指した理由を聞くと、会計監査がしたかった!という人だけでなく、様々な答えが返ってきて面白いです!(僕が会計士を目指したきっかけについては、後日記事にしたいと思ってます)

公認会計士の活躍の幅について、監査業務以外で活躍する方々の記事がありますので、興味がある方は以下の記事を一読していただければと思います!実務で活躍する人の生の声が聞けて面白いです!

ebook.tac-school.co.jp

 

■ おわりに

今回は公認会計士の主な業務である会計監査について触れました。

以上、だいぶ堅い内容になりましたが、次回以降でもっとくだけた内容も扱えたらと思ってます!