会計士見習いの日記

会計にまつわる時事ネタや実務で感じたことなどを投稿

②国際統一が進む会計基準

今回は、会計基準についての回になります。

会計基準は前回触れたとおり、企業の業績開示のために用いられます。

現在、日本や世界ではどのような会計基準が用いられ業績開示がなされているのかについてや、経済のグローバル化がもたらした会計制度への影響にも触れていきます。

 

■ 世界の会計基準

日本には日本基準(J-GAAP)という独自の会計基準があり、ASBJ(企業会計基準委員会)という組織が基準の設定主体となっています。

一方で世界に目を向けると、主に2つの会計基準が存在します。

それはUS GAAP(米国会計基準IFRS国際財務報告基準です。

前者はその名の通り、アメリカが有する自国の会計基準で、後者はヨーロッパ会計基準になります。(IFRSの読み方はイファース、アイファース、アイエフアールエスなど、人によって様々です。)

発というのも、現在IFRSはヨーロッパ各国にとどまらず、世界規模で拡大を続けています。2016年に行われた調査によれば、対象法域のうち約80%がIFRSを採用しているそうです。

以下の図は会計基準の適用状況に関する世界地図ですが、これを見るとIFRSの拡大が見て取れますね(オレンジ&水色部分がIFRS強制適用済またはその調整中、黄色は任意適用国*)。

 

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国際会計基準をめぐる最近の状況,金融庁

 

*IFRS適用の段階について

①強制適用(全面的にIFRSを採用)ex. 韓国、ブラジルなど

②任意適用(自国の会計基準を維持しつつ、IFRSでの開示も認める)ex.日本、スイス

③自国基準のみを採用(上図青色部分)ex.中国、アメリ

 

 

■ 経済のグローバル化の進展と会計への影響

1990年代以降、世界ではグローバル化が進展し、人やモノが自国を飛び越えて自由に移動するようになります。これに合わせ、経済活動もグローバル化し、海外への投資行動が盛んに行われるようになりました。

この時代、ヨーロッパでは域内統合の動きが加速化します。そして1993年、EU欧州連合)が誕生します。EUの誕生により域内の経済統合が強まると、投資家は自国だけでなく他国への投資も考えます。そして、このとき投資家の判断材料になるのは、企業の出す財務情報です(①も合わせて呼んでいただけると参考になると思います)。ここで、一つ問題点が生じます。会計基準が統一化されていないと投資家は自国の企業とと同じモノサシで他国の企業を見ることができず、投資判断に困ってしまいます会計基準によって、形式や数値に差異が生じるため)。そのため、まずはEU域内で会計基準統合化の動きが始まったのでした。

2001年にEU域内のすべての上場企業にIFRSの適用が義務化され、2005年から本格的な運用が始まりました。

2010年代に入ると、会計基準の国際化はさらに進展し、ブラジル、韓国などヨーロッパ以外の国でもIFRSが導入されていきました。

日本でも2007年にASBJとIFRSの設定主体であるIASB(国際会計基準審議会)との間で、日本基準とIFRSの差異を解消していく方向で合意がなされました(東京合意)。以降、日本は独自の基準を維持しつつ、断片的にIFRSの要素を取り入れていってます(最近でいうと収益認識基準リース会計基準)。

 

■ 企業が会計基準を変えるメリットは?

 

企業が一旦採用した会計方針を変えるには、システムの再構築などのために多大な費用と時間がかかります。国家全体としてIFRSに強制的に変えさせるというならわかりますが、任意適用が認められている場合(日本など)にはあえてIFRSに変える必要性はあるのでしょうか。

企業が会計基準を国際的に採用されている基準に変えた場合に得られるメリットは、比較可能性の向上です。

比較可能性とは、会計上では、企業間比較時系列比較に関する用語で、これを高めることで、比較がしやすくなる特性を指します。

ここでは企業間比較を例にとって話をします。

企業間比較は、ある企業と同業他社の財務数値を比較することです(ex.トヨタマツダの業績比較)。

 会計基準の統合化が進んでいないと企業間比較を行う上でいくつかの問題が生じます。

企業側から問題は個人的には大きく①経営管理上の問題と②資金調達上の問題に分けられます。

経営管理上の問題

グローバル化が進展した企業は国外にも子会社を持っていることが多いです。この場合、子会社がIFRSで本社が日本基準の場合、正確な業績比較ができず、評価に不平等が生じる可能性があります。

②資金調達上の問題

近年、外国人投資家の参入が増えている中で、自国と同じ会計基準でないと投資家は正確な判断ができず、外国人投資家からうまく資金調達を行えない可能性があります。

以上の問題点を解決するために、企業側にも積極的に採用する基準を変えるインセンティブが生じるのです。 

 

■ 今後の展望

 

日本においてもIFRSを採用する企業は年々増加しています。しかしながら、適用には業種によって格差が大きく、特に金融業界においてはほとんどiFRS適用が進んでいないのが現状です。金融業界をはじめ、IFRS適用が進んでいない業界も採用に舵を切っていくかどうか、また、ASBJとIASBとの間で追加的な合意がなされIFRS化が加速するかどうかに注目したいと思います。